幸せのジレンマ (2/2)
僕らは当然のように、ないものねだりをする。
収入が低い人はお金を欲しがり、一人っ子は兄弟を欲しがり、独身の人は彼女を欲しがる。
会社が駅から遠いとか、予定がある休日に限って雨だとか、僕らは思い通りにいかないことを見つけるのが超得意だ。
そして、僕らはいつだって、”できない理由”を探そうとしている。
お金が無いから、今はできない。英語ができないから無理。人脈が無いから、何もできない。
そうして同じ夢ばかりを毎日唱え続けるうちに、歳をとっていく。
きっと、願いは叶わないほうが幸せなんだ。
それをみんな、心のどこかで分かっているのかもしれない。
もしも願いが叶ってしまったら。
周りからは「お前は夢が叶って幸せそうだね」と妬まれ、
何か依頼をしても「お前は幸せに生きてるくせして、少しは不幸な俺の身にもなれ」と理不尽に突き放され、
そして満たされているから「できない理由」を自分で言い訳できなくなる。
かわいそうと思ってもらえることは、この世界で無難に生きていくためには一番手頃でコスパの良いことだ。
もし幸せになってしまったら、誰からもかわいそうと思ってもらえなくなる。
そしてやっぱり、その権利を失うことは怖い。
みんな、満たされない気持ちをお互い共有し合って、支え合っている。
いや、支え合いなんていうきれいな言葉じゃない。ただ、依存している。
どこかにさみしさを抱えている人。
どこかに満たされない気持ちを隠してる人。
どこかで夢が叶ってしまうことを恐れていて。
どこかで、自分が幸せになってしまうことを怖がっている。
でも、それがきっと、心地いい。