「雇用を生み出す」は偽りの正当化 (2/2)
街中を歩く人3大迷惑度ランキングは
「傘を横に持って歩く人」
「歩きスマホ」
「歩きたばこ」
の3つで占められる。
傘を横に持って歩く人は逆に傘の先端でその人の顔をど突いて良いと思うし、歩きスマホしてたらたら歩いている人は後からど突いていいし、歩きたばこしてる人はたばこを持つ手を蹴って良いと思うのだが、それをやると現行の法令ではこちらに非があることになるので、この3つはどれも「やったもん勝ち」だ。
「やらなきゃやられる」というバトルロワイヤルの世界が忠実に再現されているのが、この世の中。
小説にもなるなんて、まだまだ世の中捨てたもんじゃない。
さて、この3つの中で、明日いきなりなくなってもまったく困らないものが「たばこ」である。
傘が無くなると雨に濡れられて風邪ひきそうだし、現代っ子なのでスマホ中毒の僕にとってはスマホがなくなるのもキツイ。
しかし、たばこだけはどうでもいい。
なくなればきっとヘビースモーカーの上司がイライラしだすだろうが、上司は別にたばこがあろうとなかろうと四六時中イライラしている。
新幹線の“ディジィグネイティッドスモゥキングルゥーム イズ ロケィティッドアット♪” という音声も不要になるし、空気もクリーンになるし、ごみも減ればレストラン従業員のごみ処理作業も減るし、いいことしか思いつかない。
おまけに、たばこを吸うとがんになりやすいという研究結果も(たぶん公的に)出ている。
そうだ、今すぐたばこを無くそう。
たばこは人間にとってデメリットしかないんだから、この世から無くせば、みんながハッピーになれる。
こんなことを言うと、すぐに反発する人が出てくる。
「それはできない」
どうしてだ。
スーパーとコンビニから撤収させ、自動販売機を撤去するだけじゃないか。
「いやできない」
どうして。
その人はこう言った。
「たばこを作るメーカーや業界の人たちの雇用が奪われる。だから、できない。」
僕たちは、その人たちの人生を守るために、たばこの煙に苦しまなきゃいけないのか。
僕たちは、その人たちの人生を守るために、がんになるリスクを負わなきゃいけないのか。
みんな、これで納得しているんだろうか。
“たばこは良くない。しかし、たばこを全面禁止すると、たばこ会社の売上が無くなる。たばこ会社に勤めている人の雇用が失われる。
だから、たばこは許容されるべきである。”
いや、たばこ会社からクビにされただけで稼ぎどころを一切失うような無能な人の雇用を守る必要なんてあるのか。
そして...
“人を殺すのはよくない。しかし、人殺しがなくなると、警察と医者と裁判官の仕事が無くなる。警察と医者と裁判官の雇用が失われる。
だから、人殺しは許容されるべきである。”
これとどこが違うんだろうか。
僕にはいまだに分からない。
分からないまま、見たこともないだれかの命を守るために、今日も僕らは自分の人生をまた少し犠牲にしている。